ヒリつく過去の記憶が蘇ろうとも、これからもずっと読み続ける青春群像劇。
ギャグ漫画界に不動の金字塔を打ち立てた「行け!稲中卓球部」で有名な古谷実先生。でも僕はそれ以降の悩み多き青春漫画ともいえる作品の方が好き。平凡で先の見えない毎日を過ごしつつモンモンとした悩みを抱える主人公。ずっとモテない人生に突然自分を好きだと言ってくれる可愛い子が現れるという、男子の願望を具現化したようなパターンがお決まりの作風になりつつありますが、それでも好きなものは好き。だって自分もそんな妄想してたから(今でもたまに)。
ふとした時に思い返し、ページをめくっては今でも主人公のオギボーの思いに共感できるかどうかを確認しています。
『シガテラ』とは毒素に汚染された魚介類を摂取ることで発生する食中毒のこと
シガテラが連載されていたのももう10年以上前になる。その頃、稲中卓球部が終わった後の古谷実作品については、あまり注目していなかった。確か就職活動中に立ち寄った漫画喫茶で偶然読んで、一気にはまってしまったのだと思う。なんて的確に、非現実的なリアルさを表現するのだろうと思った。
『シガテラ』あらすじ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AC%E3%83%86%E3%83%A9_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)
ある男子高校生の周囲に起こる様々な出来事を、日常を蝕む非日常=「毒」という切り口で描いている。「シガテラ」とは元々はある種の魚類が持つ毒素、およびそれによって引き起こされる食中毒の総称。
高校生の荻野優介は平々凡々な少年であり、学校では親友・高井貴男と共に執拗にいじめられていた。彼の夢は、バイクの免許を取得して、教習所で見掛けた南雲ゆみに近付くことだが、半ば諦めていた。後に、ひょんなことからゆみの方から急接近して付き合い始めたが、高井が消息を絶ってしまうなど、災難が降り注ぐようになる。
ネタバレになるので内容についてはあまり触れませんが、苛められっ子の高校生である荻野(オギボー)がバイクに興味を持ち始めて教習所に通うところから物語は始まります。
そこから同じ苛められっ子の高井、いじめっ子の谷脇、教習所で出会う人達を中心に人生に悩んだり大人になったり事件に巻き込まれたり。彼女も出来ずに暗く趣味に走るような、ぱっとしない男子生徒だったら誰しも感じたであろう悩みや毎日のなかで、非日常の世界が音を立てずに忍び寄ります。
読んでいて辛くなるときもあります。自分に似ているから?自分よりも充実しているから?もう取り戻せない青春の中に居るから?
多分全部なのでしょう。そして気づけばいつも全巻読んでしまうのです。
この作品のココがイイ!
1.主人公荻野への共感
荻野はぱっとしない主人公だ。だからこそ、共感してしまうし、応援してしまう。彼の悩みは、自分の悩みと共感する。
いつまで経っても、人生何をすべきなのかを悩んでいる。だからこそ、読み進めてしまう。読んでいけば答えが見つかるのではないだろうかと思いながら。
2.ヒロイン南雲さんが素敵
誰しも、こんな人が彼女だったらなぁと思う女性が居る(居た)と思う。こんな人と付き合えたら、他に何もいらないし、仕事も超がんばって彼女を幸せにしたいと思えるような女性。でも俺なんかには目もくれないんだよなぁ、、、と諦めてしまうような女性。ふとしたことから話してみたらやたらと気があって、なんだか素敵なヒトねと思わずにはいられないような女性。
初めて女性と付き合った時、俺なんかでも好きになってくれる人が居るんだと、感謝と感動と勇気を貰った経験をみんな忘れてないよね?そんな事を思い出させてくれる女性、それが南雲さんなんです。
3.ラストの現実感
ネタバレになるのであまり言いませんが、賛否両論のあるラストが僕はとても好きです。泣いちゃうくらい好き。人生に正解は無いし、知ってても誰も教えてはくれない。それは今もこれからも。そんな思いが溢れるラストが非常に好きなのです。
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